敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 本当に大丈夫だろうか、私。

 今でさえ叶多くんの一挙一動に翻弄されて倒れそうなのに……。

 緊張は冷めやらないが、特にやることもないので仕方なくベッドの上に移動した。

 ベッドサイドの小さな丸テーブルにスマホを置くと、その脇に一冊の本が読みかけで伏せてあるのが目に入る。

【Los Amantes de Teruel(テルエルの恋人たち)】

 私も知っている、スペインでは有名な、実話をもとにした悲恋物語のタイトル。小説、演劇、映画と様々な媒体で人々に親しまれているが、これは戯曲を本にしたもののようだ。

 外交に関する難しい本かと思っていたので意外だった。

「叶多くん、ずいぶんロマンチックな本を読むのね」

 思わず手に取って、表紙を眺める。たしか内容はこうだった。

 テルエルとは、スペインに実際にある町の名前。その町で、裕福な商人の娘イサベルと、貧しい家の出であるディエゴが出会い、恋に落ち、結婚したいと願う。

 しかし、イサベルの両親は貧しいディエゴとの結婚を許さず、金持ちとの縁談ばかりイサベルに持ち掛けた。

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