敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 帰国してから心細い思いをしていたせいもあり、全身が震えそうになるほど嬉しくて、すぐに通話のマークに触れる。

「も、もしもし、叶多くん?」
《今、話せるか?》
「もちろん! 寝ようとしていただけだから」
《いかにも俺の声が聴きたかって感じだな。……違うか?》

 優しい笑い声に鼓膜をくすぐられるだけで、胸がときめく。

 恥ずかしいけれど、離れているぶん素直になりたい。

「ううん。……違わない」
《俺も同じだよ。それに、こうして声を聞いていると、顔が見たくなるし……美来に触れたいって思う》

 触れたい。そう言われただけで、彼の声が私を抱きしめてくれているような気分になる。

 その錯覚にもっと浸っていたくて、目を閉じ、ここが自分の部屋だという視界情報を遮断する。

「ねえ、目を閉じてみて」
《えっ? どうしたんだよ急に》
「その方が、叶多くんが近くにいるような気がするの。日本でもスペインでもないどこかで、ふたりだけで会っているみたいな」
《美来……》


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