敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

《美来……》

 名前を呼ばれただけで、そこに〝愛おしい〟という言葉まで溶けているのがわかる。

 今、本当に彼がそばにいてくれたら、きっとキスをしてくれる。そう思うとますます胸が熱くなり、叶多くんの甘い唇の感触まで思い出してかけていた、そのとき。

《¡Salud! (乾杯!)》
《¡Felicidades! (おめでとう!)》

 にぎやかなスペイン語が聞こえてきて、パッと瞼を開ける。

「叶多くん、今のって……」
《ごめん、やかましい声が聞こえた? 今度結婚する同僚がいて、これからお祝いの昼食会なんだ。俺が席に戻るまで乾杯を待ちきれなかったらしい》
「ご、ごめんなさいっ……! そうとは知らず私ったら!」

 自分がひとりの夜を過ごしているからって、つい彼にも同じテンションを要求してしまった。恥ずかしいことこの上ない。

《いや、むしろうれしいよ。美来の心の中で俺がどれだけ大きな存在なのかがよくわかった》
「叶多くん……」
《お父さんとはどう? さすがに昨日の今日では、ゆっくり話せていないか》

 甘い会話でふわふわしていたところに、核心に触れる質問が飛んできてどきりとする。

 しかし、父を説得させるために帰国したのだから、叶多くんが気にするのはあたり前だ。

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