敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「え、ええ。相変わらず忙しい人だから、同じ家に住んでいるとはいえ、すれ違っちゃって」
愛する人に嘘をつく後ろめたさで、胸が微かに軋む。それでも彼に心配をかけたくない気持ちの方が勝っていた。
《そうか。幼い頃から決められていた政略結婚を蹴って、因縁のある相手の息子と一緒になろうとしているんだ。簡単には認めらないと思う。くれぐれも無理はするなよ》
「ありがとう、そうする。もっと話していたいけれど、そろそろ食事の席に戻って。みんな叶多くんを待っているわ」
《ああ、またゆっくり話せるときにかける。おやすみ》
「おやすみなさい」
名残惜しい気持ちを振り切って、スマホを耳から離す。
本当は父の説得に失敗し、非情な本性を露わにした清十郎さんとの関係は以前よりも険悪。しかし、それを叶多くんに気取られることなく済んで、とりあえず安心した。
今後の身の振り方をじっくり考えようと思うものの、今日は色々あったせいでとても眠い。
また明日から、父や清十郎さんに対抗する術を考えなくては……。
ベッドの中であれこれ考えているうちに、私は深い眠りに落ちた。