敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
妙さんが作る、チーズとベーコン、ほうれんそうといったシンプルな具材の入ったケークサレは絶品で、幼い頃からの好物だ。彼女もそれをよく知っているので、いつも絶妙なタイミングで用意してくれる。
「さすが妙さんね。ふた切れちょうだい」
「かしこまりました。サービスで大きめに切っておきますね」
「ふふっ、ありがとう」
私は昔からそうなのだが、両親より妙さんや泉さんと過ごしている時の方が、心が寛ぐ。
両親にはもちろん家族としての情やこれまで育ててもらった恩を感じているが、素直に甘えたり、悩みを打ち明けたりする対象は、もっぱら家政婦さんのふたり。
窮屈な八束の家でもなんとかやっていけているのは、ひとえに彼女たちのおかげなのだ。
「美来様、お荷物が届いております」
八人掛けの広いダイニングテーブルでひとり気ままに妙さんのケークサレを楽しんでいたら、泉美さんが大きな箱を手にして私のもとにやってきた。
「荷物って、いったい誰から?」
「差出人は、奥様のお名前になっています。中身はお着物のようです」
「着物……?」
しかも、母からとはどういうことだろう。