敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
昨夜は親しい社長夫人たちの集まりに参加しており、今日も私が起きた時にはすでに習い事に出かけた後だったので、顔を合わせていない。
結婚のことも母はイマイチどう考えているのか読めないが、父や清十郎さんの説得に協力してもらえないか、ダメもとで頼んでみようと思っていたところだ。
中身が本当に着物なら汚したくないので、食事を終えてからリビングで箱を開けてみた。
丁寧に畳まれて入っていたのは、松竹梅の柄が施された、緋色の美しい振袖だ。
手触りの心地よさや柄の仕上がりから見るに、一級品の着物のよう。
母は、これをなぜ私に……?
不可解な贈り物に首を捻っていたら、テーブルの上でスマホが鳴る。母からの電話だ。
「もしもしお母さん? さっき届いた着物って……」
《よかった、ちゃんと届いたのね。それは、再来週の結納で着るあなたの着物。美来ったら何度呉服屋さんに誘ってもついてきてくれないんだもの、勝手にあなたの体型を伝えて仕立ててもらったのよ》
「ちょっと待って。結納……?」
寝耳に水もいいところだ。しかも、再来週だなんて急すぎる。