貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
「君の事は、以前から気付いていたんだ。
 火曜日以外の昼休みには、こちらを見ていただろう?
 だから姿が見えない火曜日には何か用事があるのかと思っていたら、まさか君が投書の被害者だったとはね」

助けていただいたあの日から、リシャール殿下にはお声を掛けていただくことが増えました。


「音楽室の事、生徒会にお届けくださったのは
一体どなたなのでしょう?」

「投書は無記名だからなぁ」


中等部の生徒会室前には、相談箱が設置されておりました。
生徒会や学院に対する要望や校則や行事に対する感想など、何でも良いから『声』を届けて欲しいと、殿下が生徒会長になられた折りにその箱は置かれたのでした。

皆の声を聞くこと。
将来国王陛下として、この国を治められていくにあたって、中等部の生徒会から始めるのだと、殿下は仰せになられました。


「クロエとは、いつもそんな話をしているから」


クロエ様とは、幼い頃からのご婚約者のモンテール侯爵令嬢クロエ・グランマルニエ様の事でしょう。
お美しいリシャール殿下に憧れるご令嬢方は数多く、皆様は殿下と侯爵令嬢が政略で有り、お互いに愛情など無いものだと信じていたいようでしたが。

失礼ながら私には、少なくとも殿下はクロエ様に対して、好意以上のお気持ちをお持ちなのだと
見て取れたのです。
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