貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
そして王妃になった元悪役令嬢の胸には、もうひとつの物語が完結されずにずっと残されたまま。


断罪されたあの夜、彼はいつまで待ってくれていたのだろうか。
長い廊下を駆け抜けて、彼の腕の中に飛び込む筈だった。
アンリに腕を取られなければ。

悪役令嬢の真実の愛の相手。
今も鮮やかに思い出せる……
ガブリエル・マルタン・シャンドレ。

彼は騎士団訓練所で見かけたアンドレ・マルタンの14歳年上の兄だった。


 
カブリエルに対する贖罪から、せめて、と。
私はアンドレを、第1王子のリシャールの護衛に付け、途中で終わらせた学生生活を続けさせることにした。


カブリエルからよく聞かされた。

『子沢山の家だから、君には苦労をかけてしまう』

『田舎で、貧乏暮らしをさせるのが辛い』

断罪された自分は二度と王都には顔を出せないから、却ってそれがいいのだからと、怯むガブリエルを口説きおとした。

卒業パーティーは、王城で開かれる。
王太子妃教育で通い慣れた王城で、何処が警備が手薄で、馬車を待たせていても人目につかない
裏口かも把握していたから、そこで待つように、ガブリエルには頼んでいた。
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