貴女は悪役令嬢ですよね？ ─彼女が微笑んだら─

ふと、思い付いて口に出してみた。


「お相手の年齢は？」

「……20は超えていたか」

28だと、聞いていた。
嫡男とスペアの次男を産んでから離縁されたと。

初体験が10歳以上年上の女だとは知られたくなかったか。
暗い表情を見せてくれた御礼に、良いことを教えてやろうと思い付いた。


「私と同じ学年に結構可愛らしい容姿の男爵令嬢が居て、彼女が兄上の事を物凄く慕っていると、聞いたことがありますよ」

愚か者は途端に顔を緩めた。
こいつは本当にバカだ。


「何と言う名前だ？」

「確かコレット・モーリス男爵令嬢。
　平民の母親が男爵に手を付けられて出来た娘です。
　男爵夫人にバレないように市井で囲われていたのですが、妻が亡くなったので、男爵が母子を引き入れたそうです。
　平民だったからか、なかなか進歩的な娘で。
　好きだから、婚約者が居ても構わないと、兄上の事を話して……」