貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
貴女が現れて、あの物語は終わった。
僕がそう言ったら、貴女は微笑んだ。

『これからは貴方が主人公の物語が始まるのね』って。



第2王子シャルル殿下からは話を聞いていた。
義姉クロエの良くない噂を流して、貶めている女が居ると。

こいつがその女か。
僕はまじまじと、ふわふわしたその女を見た。

こちらに関わってこなければ。
ひっそりと学院の片隅に居たのなら。
その存在を許してやったのに。


「ジュールって、傷付いてるのよね。
 身も心もあの頃のことを忘れられなくて、苦しんでいるでしょ?
 大丈夫、その痛みをあたしが癒してあげるからね」

何を言っているんだと、馬鹿なのかと。
立ち去ることはしなかった。

シャルル殿下は、この女の事をフランソワ侯爵令息に一任したと仰っていたが。
目の前のバカ女をからかうのも一興かと、思っただけだ。


義姉に関するあれこれに、一番に動く王太子殿下は隣国へ行かれていた。
来年、学院を卒業した殿下は将来の国王陛下として、本格的に王族の御用を勤められる。
今回はその前哨戦として、親戚筋の隣国へ国王陛下の名代として赴かれたのだ。

正式な書状は卒業してからになるが、義姉クロエとの婚姻式への出席を口頭で招待することにもなっていらっしゃった。

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