貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
予定より早く帰国した俺に弟は慌てていた。
クロエが王太子妃教育で登城している曜日だったので、講義が終わればお茶をしようと彼女に伝言を頼んでいた。

久々にふたりきりのお茶会を堪能しようとしていたのに、彼女がそこに来る前にシャルルがやってきて、俺に『悪役令嬢』の噂を聞かせたのだった。


「明日ドムがビグローを呼び出して、噂を流した真意を聞き出す予定でした」


そう説明を受けていたところに、噂の『悪役令嬢クロエ』の登場だ。
丁度3年前、『真実の愛』うんぬんかんぬんを
言い出した馬鹿な俺を許して貰う際にクロエには
宣言されていた。

『次にヤラカしたら、鉄拳制裁ですよ』と。

それは仲裁に入っておられた国王陛下の許可もあって、王城では誰もが知っている。


2度と馬鹿な事は口にしないと誓った俺が、それだけで許されるならと、同意した鉄拳がどれ程のものか、想像もしていなかったが、俺に向かって腕を振り回しながら近付いてくるクロエの姿を見たら、結構なものだと……想像がつく。
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