貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
「それでも、クロエ嬢は傷付いていると思うよ。
 兄上だって、悪役令嬢の噂を知っていたのに放置していた君や僕を許さないだろう」

「動きますか?」

「あの女に釘を刺すくらいは、ね」


クロエが傷付いている、そう言われたらドミニクだって動く。
こいつは基本的に、兄上に言われたら動く、みたいな感じで。
今回も来週早々に噂を知った兄上からの指示を
受けて動くつもりだったんだろうけれど。
それでは遅い。
自分がクロエの事で勝手に動いたら、兄上が気にすると思っているのはわかるけれど。


ドミニク・フランソワは兄上の婚約者が好きだ。
そして、僕も。

彼女を愛している。


銀色の背中まで伸ばした髪も。
深い夜の紫の瞳の色も。
透き通る儚く白い肌も。

声も、手も、香りも、何もかも。
彼女を愛している。


初めて会った8歳の頃からだ。
それは彼女が11歳で兄上と婚約した……
1年前だった。
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