もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
九話 これからのこと
その後、王位継承権をはく奪された第一王子のバートランドは、自室での軟禁を解除されて北の砦に赴任することが決まった。
娯楽のない地で寒さと戦う北の砦は、誰もが助け合いながら生きている。
金や権力ではどうしようもできない厳しい自然と隣り合わせの生活に身を置くことで、金や権力に頼る己の愚かさを顧みてくれればという国王陛下の思いがあるのだろう。
第一王子に宝飾品やドレスを贈られ寵愛を受けていたリコリスは、その恩恵の余波で学園内の反『もったいない革命』勢力を率いていた。
リコリスに侍っていれば、いずれ第一王子とも縁付くと考えた生徒たちがいたのだ。
おおっぴらにリコリス以外の生徒会役員に楯突くわけではないが、それとなくリコリス以外の生徒会役員をこき下ろし、あんなのは貧乏人のすることだと嘲っていた集団だった。
しかし今となっては、第一王子という神輿は降ろされた。
リコリスは次期国王陛下の寵愛する側室候補から、ただの平民上がりの子爵令嬢に戻る。
反『もったいない革命』勢力は一気に瓦解した。
誰もがそんな派閥に属していたつもりはないという顔をして、リコリスから離れていった。
しかも第一王子と遊行にふけるため学園も欠席がちだったリコリスは、役員に選ばれるほど優秀だった成績が軒並み落ちていた。
庶子であることを跳ね返すように、頑張って勉強をして努力をして得た地位だったのに。
自らの力で勝ち取った書記という役職を、リコリスは投げ捨てたも同然だ。
学園からリコリスの姿は消えた。
ジェニファーは、もしかしたら第一王子について北の砦に行ったのかもしれないと思っていた。
第八回役員会議は、リコリスを除いたメンバーで開催された。
これまでの集大成だ。
次年度の役員たちが、戸惑うことなく『もったいない革命』を引き継いでいけるように、ジェニファーはマイルズとアラスターと協力して、丁寧な手引き書を完成させた。
ベネディクトは次年度も生徒会の顧問を引き受けると言っていた。
これまで一年間、ともに走り続けた仲間だ。
きっと来年の生徒会役員たちのことも、引っ張っていってくれるだろう。
頼もしい仲間に囲まれて、ジェニファーは生徒会活動をやり遂げた満足感でいっぱいだった。
会議のあとは小さいけれど打ち上げをした。
寡黙騎士のクリフォードも混ざって、一年間を振り返る。
事を荒立てぬことだけを考えて、大人しく生徒会活動を終えようとしていたマイルズは、ジェニファーに感化されてすっかり生徒会活動の魅力に取りつかれた。
自分たちの手でよりよい自治をつくることが出来ると学び、それを今後の宰相補佐の仕事に役立てたいと誓った。
なんでもおもしろがって真剣にことに取り組まない性格だったアラスターは、無自覚にずっと慕い続けたイヴリン嬢が正式に婚約者となり、その真っすぐな心に寄り添えるよう真剣に帝王学を学ぶという。
「本当に国民のことを考えている人なんだ。僕はただでさえ年下だし、もっとしっかりしたいって思っているよ」
それを聞いてクリフォードがうんうんとうなずいていた。
これまで明かされなかったが、クリフォードは隣国の出身で、話すと訛りが出てしまうという。
アラスターの護衛騎士として、少しの粗も許されない。
そう思ったクリフォードは、この学園でしっかり語学の勉強をしたのだという。
「今では、かなり違和感なくしゃべれていると思います」
確かに、隣国の出身だと言われなければ気づかないほど、なめらかな発音だった。
しかし訛りを隠している間に寡黙が身についてしまったようで、やっぱりなかなか発言はしないのだった。
ベネディクトも生徒会役員のみんなには感謝をしているという。
「最初はいやいや引き受けた顧問だったんです。私が年若く、学園長の息子だから押し付けられたのだと思っていました。だけど、違ったんですね。ほかの教師たちは、私の教育の場としてここを任せてくれたのでしょう。教師という職の楽しさを、私はここで見つけました」
なんと教師になったのもしぶしぶだったというベネディクトは、すっかり晴れやかな顔をしていた。
「ケンブル公爵家は代々、ここの学園長を拝命しています。私もいずれはそうなるでしょう。しっかりと『もったいない革命』は受け継いでいきますからね」
ジェニファーは自分が卒業したあとも、自分の残した『もったいない革命』が学園で生き続けることに感動した。
そして生徒会役員の任期が終わることを悲しんだ。
横に座っていたマイルズがそっと話しかける。
「ジェニファー、君には政務官が向いていると思う。これからも政策の企画をしたりして、一緒に宰相閣下のもとで学ばないか?」
マイルズにはずっと誘われていたことだった。
ジェニファーが卒業後の進路に迷っていることは、すでに話していた。
「これだけ企画力があるんだ、きっと国の力にもなれる」
そう言って後押ししてくれる。
「そうだそうだ。ジェニファー嬢の困っている生徒を助けたいという思いは、政治をする者にとって大前提な思いなんだ。それを持たずに目先の地位ばかりに気を取られるやつが多いのは悲しい現実だよ」
アラスターがちらりとマイルズを見て皮肉る。
以前のマイルズがそうだったと言いたいのだ。
マイルズもそれを肯定する。
「平民でも宰相になれるという前例を作りたかった。それだけに気持ちが傾いていたのは否定できない。だが、ジェニファーのおかげで宰相になって何をしたらいいのかが分かったんだ。俺は困っている国民に寄り添う政治を目指すよ」
未来を語るマイルズの瞳の輝きに魅せられる。
私も『もったいない革命』を推し進めているときは、こんな瞳をしていたかもしれない。
マイルズと一緒に、これからも何かを成し遂げられるとしたら。
私は大きくうなずいて、進路を決めた。
打ち上げは夜まで続き、私はマイルズに送ってもらって帰宅した。
そして未明、私は侍女によっていつもより早くに起こされた。
学園で火事が起きて、生徒会室が全焼したという急報があったのだ。
娯楽のない地で寒さと戦う北の砦は、誰もが助け合いながら生きている。
金や権力ではどうしようもできない厳しい自然と隣り合わせの生活に身を置くことで、金や権力に頼る己の愚かさを顧みてくれればという国王陛下の思いがあるのだろう。
第一王子に宝飾品やドレスを贈られ寵愛を受けていたリコリスは、その恩恵の余波で学園内の反『もったいない革命』勢力を率いていた。
リコリスに侍っていれば、いずれ第一王子とも縁付くと考えた生徒たちがいたのだ。
おおっぴらにリコリス以外の生徒会役員に楯突くわけではないが、それとなくリコリス以外の生徒会役員をこき下ろし、あんなのは貧乏人のすることだと嘲っていた集団だった。
しかし今となっては、第一王子という神輿は降ろされた。
リコリスは次期国王陛下の寵愛する側室候補から、ただの平民上がりの子爵令嬢に戻る。
反『もったいない革命』勢力は一気に瓦解した。
誰もがそんな派閥に属していたつもりはないという顔をして、リコリスから離れていった。
しかも第一王子と遊行にふけるため学園も欠席がちだったリコリスは、役員に選ばれるほど優秀だった成績が軒並み落ちていた。
庶子であることを跳ね返すように、頑張って勉強をして努力をして得た地位だったのに。
自らの力で勝ち取った書記という役職を、リコリスは投げ捨てたも同然だ。
学園からリコリスの姿は消えた。
ジェニファーは、もしかしたら第一王子について北の砦に行ったのかもしれないと思っていた。
第八回役員会議は、リコリスを除いたメンバーで開催された。
これまでの集大成だ。
次年度の役員たちが、戸惑うことなく『もったいない革命』を引き継いでいけるように、ジェニファーはマイルズとアラスターと協力して、丁寧な手引き書を完成させた。
ベネディクトは次年度も生徒会の顧問を引き受けると言っていた。
これまで一年間、ともに走り続けた仲間だ。
きっと来年の生徒会役員たちのことも、引っ張っていってくれるだろう。
頼もしい仲間に囲まれて、ジェニファーは生徒会活動をやり遂げた満足感でいっぱいだった。
会議のあとは小さいけれど打ち上げをした。
寡黙騎士のクリフォードも混ざって、一年間を振り返る。
事を荒立てぬことだけを考えて、大人しく生徒会活動を終えようとしていたマイルズは、ジェニファーに感化されてすっかり生徒会活動の魅力に取りつかれた。
自分たちの手でよりよい自治をつくることが出来ると学び、それを今後の宰相補佐の仕事に役立てたいと誓った。
なんでもおもしろがって真剣にことに取り組まない性格だったアラスターは、無自覚にずっと慕い続けたイヴリン嬢が正式に婚約者となり、その真っすぐな心に寄り添えるよう真剣に帝王学を学ぶという。
「本当に国民のことを考えている人なんだ。僕はただでさえ年下だし、もっとしっかりしたいって思っているよ」
それを聞いてクリフォードがうんうんとうなずいていた。
これまで明かされなかったが、クリフォードは隣国の出身で、話すと訛りが出てしまうという。
アラスターの護衛騎士として、少しの粗も許されない。
そう思ったクリフォードは、この学園でしっかり語学の勉強をしたのだという。
「今では、かなり違和感なくしゃべれていると思います」
確かに、隣国の出身だと言われなければ気づかないほど、なめらかな発音だった。
しかし訛りを隠している間に寡黙が身についてしまったようで、やっぱりなかなか発言はしないのだった。
ベネディクトも生徒会役員のみんなには感謝をしているという。
「最初はいやいや引き受けた顧問だったんです。私が年若く、学園長の息子だから押し付けられたのだと思っていました。だけど、違ったんですね。ほかの教師たちは、私の教育の場としてここを任せてくれたのでしょう。教師という職の楽しさを、私はここで見つけました」
なんと教師になったのもしぶしぶだったというベネディクトは、すっかり晴れやかな顔をしていた。
「ケンブル公爵家は代々、ここの学園長を拝命しています。私もいずれはそうなるでしょう。しっかりと『もったいない革命』は受け継いでいきますからね」
ジェニファーは自分が卒業したあとも、自分の残した『もったいない革命』が学園で生き続けることに感動した。
そして生徒会役員の任期が終わることを悲しんだ。
横に座っていたマイルズがそっと話しかける。
「ジェニファー、君には政務官が向いていると思う。これからも政策の企画をしたりして、一緒に宰相閣下のもとで学ばないか?」
マイルズにはずっと誘われていたことだった。
ジェニファーが卒業後の進路に迷っていることは、すでに話していた。
「これだけ企画力があるんだ、きっと国の力にもなれる」
そう言って後押ししてくれる。
「そうだそうだ。ジェニファー嬢の困っている生徒を助けたいという思いは、政治をする者にとって大前提な思いなんだ。それを持たずに目先の地位ばかりに気を取られるやつが多いのは悲しい現実だよ」
アラスターがちらりとマイルズを見て皮肉る。
以前のマイルズがそうだったと言いたいのだ。
マイルズもそれを肯定する。
「平民でも宰相になれるという前例を作りたかった。それだけに気持ちが傾いていたのは否定できない。だが、ジェニファーのおかげで宰相になって何をしたらいいのかが分かったんだ。俺は困っている国民に寄り添う政治を目指すよ」
未来を語るマイルズの瞳の輝きに魅せられる。
私も『もったいない革命』を推し進めているときは、こんな瞳をしていたかもしれない。
マイルズと一緒に、これからも何かを成し遂げられるとしたら。
私は大きくうなずいて、進路を決めた。
打ち上げは夜まで続き、私はマイルズに送ってもらって帰宅した。
そして未明、私は侍女によっていつもより早くに起こされた。
学園で火事が起きて、生徒会室が全焼したという急報があったのだ。