フユノサクラー真冬の夜、恋の桜が舞ったー
=とりあえずとす…⑤=



『失礼いたします…』


ナナボシ先生が入って行ったのは、誠和東中学の校長室だった


「ああ、先生、忙しいところすいませんね。…理事、参りましたので…。我が校の社会科教諭、七星潔子先生です。…先生、こちらは文科省中学教育推進審議会の宝田理事だよ」


『七星です…。本日はお忙しいところわざわ恐縮です』


「いえいえ、七星先生。…宝田です。いやあ、あなたの評判は兼ねてから伺ってましてね。ぜひ、お会いしたいと思っておりました」


ナナボシ先生はニコニコしながら挨拶を交わした後、奥山校長の隣に腰を下ろした



***



「…という訳で、七星先生の創意を凝らした授業には、当審議会でも着目しておりまして…。ついては、実際に授業の様子を視察させていただきたいと思うとりました」


『はあ‥』


「宝田理事は、先生がこの学校の2年生に導入している、例の長期課題に関心を持たれているんですよ」


「私が聞いているところでは、何でもグループ分けした生徒たちに自主的な長期討論を重ねさせ、3年進級時に討論報告会をもたれるとか…。しかも、テーマは政治やパブリックの側面から、生徒に社会参加の重要性を探求させることを主眼とされてるらしいですな」


『いえ、そんなたいそうな試みではないんです。とても、国の機関のお目にいれるようなものでは…』


”参ったな…”


この時のナナボシ先生はまさにその一言に尽きた





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