戻ってきたんだ…(短編)
二度目のお別れだ
「翔……ごめんね、わたしばっかり勝手なこと言って。
私だけが悲しいわけないのに、翔だって辛いよね…」
「紗梨奈…」
「私、大丈夫だから。
ちゃんと、前を向いて、翔が安心できるように笑ってるから」
そっと身体を離すと、紗梨奈は、ね?と小首を傾げてふわりと微笑んだ。
彼女は優しい表情のまま、僕の頬を撫でる。
「私、もう泣かない。
強くなる。
翔が安心して旅立てるように」
「あぁ、紗梨奈なら大丈夫だ。
絶対、幸せになれる」
彼女の手に自分の手を重ねて微笑むと、
彼女は力強く頷いた。
そして、満面の笑みを浮かべる。
僕の大好きだった、太陽みたいな笑顔。
すぐ目の前にいるはずなのに、ふと遠く感じた。
彼女の笑顔が、徐々にくずれて。
やがて哀愁を帯びる。
その表情の変化を見ただけで、瞬時に自分の状況を理解した。