戻ってきたんだ…(短編)
もう一度約束しよう
しばらくして
紗梨奈は落ち着いたらしく、赤い目をしながらも笑ってくれた。
それに僕も微笑む。
そして、もう一度ぎゅっと抱き締めた。
「………翔、私も好き」
「うん…」
「大好き……」
「………うん」
だんだん紗梨奈の声が弱くなっていくのが分かる。
そのまま自然と流れる沈黙。
…いっそこのまま
時が止まってしまえばいいのに……。
こんな願いが頭を掠めたとき、
自分がこんなことを考えたことに驚いた。
――やばいな、相当きてる。
こんな、『らしくないこと』考えるなんて…。
すると、思わず口元に自嘲の笑みが浮かんだ。
ずっと一緒なんて、できるわけがない。
何せ僕はもう、
死んでるんだから…。
その時、一瞬自分の腕が透けたのが目についた。
「…………」
そろそろ時間が近づいてるってことか…。
僕は無言のままそう確信する。
だったら………消える前に、もう一つ話さなきゃな。
そう思って、彼女の顔を上げさせようと肩を掴む。
すると彼女は、僕の胸に顔を埋めたまま、震えた声で言った。