悪役令嬢に転生した元絵師は、異世界でもマイペースを崩さない
妄想するキヨノの思考を無視して、会場に再び静寂をもたらした面々が待望のご入場をしてきた。
彼らは今年度入学する新入生の中で最も高貴な方々。
乙女ゲームやファンタジー小説のテンプレ、王太子様とその取り巻き御一行様。
そんな彼らこそが、キヨノを死の淵に追いやる、諸悪の根源であるといえよう。
キヨノは緊張の面持ちで彼らを見つめた。
“こ、これは、まさか、飛行機事故なんかで全員が死亡し、揃って異世界転生したパターン?”
キヨノは、初めて会った王子様とその取り巻きの面々を見て驚きと戸惑いを隠せなかった。
王道の金髪碧眼の王子様は渡瀬拓夢、将来の宰相候補枠であるインテリメガネは鷹司千紘、脳筋護衛騎士枠は春日吏音、そして王子様の隣に陣取るもう一人の悪役令嬢は旧姓村瀬滋子にソックリではないか。
いずれも同じ系列の会社で寝食をともにした大切な存在。
髪や瞳の色こそ違えど、彼らの容姿はまるで、清乃が前世で愛してやまない友人達そのものだったからである。
もちろん、ゲームで描かれていた攻略対象と悪役令嬢は、2次元の美しいイラストだったから友人らとは異なる。
そもそも、登場人物は清乃の周りにいる人物をモデルに2次元化したものではなかった。
なので、このゲームに登場している主要人物は全て別人のはずなのだ。
しかし、ミナのようにゲームと全く同じ設定の登場人物がいるのも事実。
そのため、この世界が“虹サニ”の世界ではないと言い切れないのが頭の痛いところである。
とは言っても、だ。
“虹サニ”にそっくりなこの世界が、ゲームシナリオと微妙に異なる、この現象ですら、異世界転生物語では“あるある“なのが鉄板、もどかしい。
そこは、おかしいな?と首を傾げるよりも、仕方がない、と割り切るのが賢明なのだと思う。たぶん。
「貴方が噂のエバンス家ご令嬢か。凛としたそなたにその紺色の騎士服はとても似合っている」
「お褒め頂き光栄に存じます。ご指摘の通り、私はエバンス家長女キヨノ·エバンスにごさいます。以後、お見知りおきを」
キヨノは騎士服に合わせて、令嬢のカーテシーではなく、騎士の礼をとる。
それは今後もキヨノが王族に忠誠を尽くすという、決意の現れだった。
「ここは学園。通っている間は身分は関係ないことになっている。エバンス嬢もどうか楽にしてほしい」
「はっ」
王太子のテンプレキメゼリフにキヨノが顔をあげると、キラキラした面々と目が合った。
だが、そこにいる全員が、キヨノを見ても何のリアクションも示さない。
千紘のソックリさん眼鏡に至っては、目すらも合わない有様だ。
ということは、彼らは“似た誰か”というだけで、前世の友人達とは中身も異なるということ。
キヨノは、ほんの少し心に抱いていた希望を打ち消すと、
「それでは式も始まりますので、御前を失礼いたします」
と、踵を返し自分の席に向かって歩き始めた。
その様子を、寂しそうに見つめる王太子とその取り巻きの面々が見つめていることも知らずに。
彼らは今年度入学する新入生の中で最も高貴な方々。
乙女ゲームやファンタジー小説のテンプレ、王太子様とその取り巻き御一行様。
そんな彼らこそが、キヨノを死の淵に追いやる、諸悪の根源であるといえよう。
キヨノは緊張の面持ちで彼らを見つめた。
“こ、これは、まさか、飛行機事故なんかで全員が死亡し、揃って異世界転生したパターン?”
キヨノは、初めて会った王子様とその取り巻きの面々を見て驚きと戸惑いを隠せなかった。
王道の金髪碧眼の王子様は渡瀬拓夢、将来の宰相候補枠であるインテリメガネは鷹司千紘、脳筋護衛騎士枠は春日吏音、そして王子様の隣に陣取るもう一人の悪役令嬢は旧姓村瀬滋子にソックリではないか。
いずれも同じ系列の会社で寝食をともにした大切な存在。
髪や瞳の色こそ違えど、彼らの容姿はまるで、清乃が前世で愛してやまない友人達そのものだったからである。
もちろん、ゲームで描かれていた攻略対象と悪役令嬢は、2次元の美しいイラストだったから友人らとは異なる。
そもそも、登場人物は清乃の周りにいる人物をモデルに2次元化したものではなかった。
なので、このゲームに登場している主要人物は全て別人のはずなのだ。
しかし、ミナのようにゲームと全く同じ設定の登場人物がいるのも事実。
そのため、この世界が“虹サニ”の世界ではないと言い切れないのが頭の痛いところである。
とは言っても、だ。
“虹サニ”にそっくりなこの世界が、ゲームシナリオと微妙に異なる、この現象ですら、異世界転生物語では“あるある“なのが鉄板、もどかしい。
そこは、おかしいな?と首を傾げるよりも、仕方がない、と割り切るのが賢明なのだと思う。たぶん。
「貴方が噂のエバンス家ご令嬢か。凛としたそなたにその紺色の騎士服はとても似合っている」
「お褒め頂き光栄に存じます。ご指摘の通り、私はエバンス家長女キヨノ·エバンスにごさいます。以後、お見知りおきを」
キヨノは騎士服に合わせて、令嬢のカーテシーではなく、騎士の礼をとる。
それは今後もキヨノが王族に忠誠を尽くすという、決意の現れだった。
「ここは学園。通っている間は身分は関係ないことになっている。エバンス嬢もどうか楽にしてほしい」
「はっ」
王太子のテンプレキメゼリフにキヨノが顔をあげると、キラキラした面々と目が合った。
だが、そこにいる全員が、キヨノを見ても何のリアクションも示さない。
千紘のソックリさん眼鏡に至っては、目すらも合わない有様だ。
ということは、彼らは“似た誰か”というだけで、前世の友人達とは中身も異なるということ。
キヨノは、ほんの少し心に抱いていた希望を打ち消すと、
「それでは式も始まりますので、御前を失礼いたします」
と、踵を返し自分の席に向かって歩き始めた。
その様子を、寂しそうに見つめる王太子とその取り巻きの面々が見つめていることも知らずに。