花に償い
わたしが本来の薫子の性格だったら、上から物を言われたり高圧的な態度を取られるのに癇癪を起こして、この職場をすぐに去っていただろう。
でもここを出たら、職なんてない。
少しでも寿命を延ばすためには我慢が必要。
「女将さん、こっち終わりました」
「じゃあこっちもやりな!」
どんなにじゃがいもを剥きすぎて、じゃがいもになってしまわないか心配だろうと。
「なんか薫子、熱ある?」
「ないわよ。どうして?」
「最近静かだから。女将さんとも喧嘩しないし」
同じく下働きの桃香が顔を覗き込む。