花に償い
喧嘩、してたな。遠い記憶だ。
「てゆーか、丸くなった?」
「年齢のせいかしら」
「おばあちゃんになったってこと?」
「歳取り過ぎだわ」
呆れて肩を竦める。桃香はわたしとも歳が近く、昔からここへ働きに出ているらしい。
わたしにこの店を紹介してくれたのも桃香で、ポテトナイフの使い方を教えてくれたのも桃香。
夜になり、料理屋の電灯がつく。
裏で洗い物をしていると、珍しく女将さんが顔を出した。
「薫子!」
「どのお皿ですか?」
「皿じゃない、あんたにお客さんだよ!」
「おきゃくさん……」
そんな野菜はあっただろうか、と一瞬考えてしまった。