花に償い

ぱっと顔を輝かせて、こちらを見る。

「俺、ずっと薫子さまのこと探してたんです」

何故。
わたしたちの別れは、「また手紙を書くね」というような円満なものじゃなかった。

「言ってたじゃないですか、薫子さま。卒業したら会社を起こすって」

確かに言った。
わたしはの瞳の中のきらきらに巻き込まれそうになる。

だから何だ、とは言えなかった。

「そしたら俺を雇ってくれるって」

無謀な人間ほど、自分を振ってしまうのだ。

自らを、人生に投げ込んでしまう。

そして、わたしの中の感情が震える。


< 15 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop