花に償い
泣きそうに歪む。何度もそんな顔をさせたな、と思い出す。
過去のことだ、全て。
「違います」
「……お引き取りください」
「薫子さま」
「失礼します」
わたしは頭を下げる。皹した指先が目に入る。
こんなにも惨めな思いをするとは思わなかった。
そのまま裏口から洗い場へと戻る。
皿が先程の二倍は溜まっていた。
「薫子、さっきのひとって……どうしたの?」
「目に泡が入って」
目元を拭う。涙が出た。
桃香が心配して声をかけてくれる。
「大丈夫? あんまり擦らない方が良いよ」
「うん、ありがとう」