花に償い
「……ここに来ていること、彼女は知ってるの?」
「彼女とは」
肇が持っていたショールを広げ、わたしの肩に掛けようとしてくる。
「わたしが陥れようとしたあの子よ」
その手を払う。空はどんより曇っており、雪が降りそうだった。
夜は昼間と違って寒い。
払った肇の手は冷たく、いつからここで待っていたのだろうと思う。
「薫子さま、冷えますので」
「すぐ戻るから要らないわ。それより、」
「百合音さまには言ってません。俺の勝手な行動でここに来ています」
ふわりと肩にショールが掛かった。