花に償い
何故、とこの前からずっと思っている。
「こんなところ、知ってる誰かに見られたら噂が立つわよ」
思わずショールを広げて頭に被る。顔を隠すように俯いた。
いや、噂なんていくら立っても良い。
わたしにはもう、関係ないのだから。
そういう風に割り切れたらどんなに楽だっただろうか。
「この前の話の続きです。俺は貴方が」
「起業の資金を一緒に集めるなんて。冗談を本気にしないで」
あれからずっと思っていた。
肇が何に拘っているのかは分からないけれど、そんなのはただの夢だ。
今の安泰した職に就いている肇を巻き込んで出来るようなことではない。