花に償い
わたしを裏切った賢い犬。
いまでもわたしに忠誠を誓おうとする馬鹿な犬。
「腕の手当、してくれてありがとう。服も洗ってくれてたわよね、ありがとう。言うのが遅くなってごめんなさい」
「いえ、そんなこと」
ぶん、と首を横に振る。わたしが雪を払うより、水滴が散った。
「俺は一生、薫子さまに忠誠を誓います。百合音さまに今は仕えていますが、魂も身も精神も全て貴方に捧げます」
わたしの手を取ったまま、肇は言う。
「捧げるだなんて生贄みたいじゃない。わたしは邪神ってとこかしら」
「薫子様はフレイヤです」
「止めなさい、北欧神話から石を投げられるわ」