花に償い
息を吐く。それが白く、わたしはショールを取った。
もう夜も遅く、通りに人は殆ど居ない。
「ハジ、私に忠誠を誓ってるなら言うことを聞いて欲しいのだけれど」
ショールを彼の肩にかける。スーツだけでは寒いに決まっている。肇が漸く顔を上げた。
「お願いだから、もうここには来ないで」
「包帯、いつからこうなんですか?」
肇が眉を顰めながら尋ねてくる。
「……昨日からだけど。片手で巻くのは難しいのよ」
「じゃあ俺に言ってください」
『ここに来るな』の意味を『職場に来るな』と捉えた肇が、次は下宿先へ来るようになった。