花に償い
しかもいつの間にか女将さんと仲良くなり、私の部屋の前に肇専用の椅子が置かれている。
肩の傷は良くなり、腕の傷も同様だったが、巻かれた包帯が不格好なのに気付かれ、肇に巻かれ直された。
「手もこんなに……」
皹の多い手を取り、肇は泣きそうな顔をする。
それが鬱陶しく、手を取り上げた。
「今日はこれ持ってきたんです」
ぱっと顔を明るくさせ、肇はポケットから小さな入れ物を出す。蓋を開けると、中身はクリームだった。
再度わたしの手を掴み、それを塗り込む。
優しい大きな手だ。