花に償い

雑巾を絞る。この前よりは皹が減った。

「学園にいた時の友達?」
「……いえ、友達じゃないわ」
「じゃあ使用人さん?」

よく気付いた、と桃香を見る。箒を持ちながら唇を尖らせている。

「え、どんな表情なのよ?」
「やっぱり薫子はお金持ちの家の人だったんだね」
「今は違うわ」

あれだけあった服も、靴も、ふかふかのベッドも。
起きれば出てきた朝食も、帰れば「おかえりなさい」と言ってくれる声も。

もう何も残っていない。

「ここを出て行っちゃうの?」

その問に驚きを隠せなかった。

「そんなわけないでしょう!?」

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