花に償い

だから肇に裏切られ、学園を追放され、こうして好いていた男にまで足元を見られて。

「……わかりました」

ここで否とは言えない。

大妻財閥の跡取り息子に逆らって良いことはひとつもない。わたしだけならまだしも、肇も巻き込むかもしれない。

優一だってそれを分かって、わざわざここまで会いに来たのだろう。

店に戻ると桃香が心配するようにこちらを窺っている。

大丈夫よ、と肩を竦めてみせた。

洗い物にとりかかる為に袖を捲る。
解けた包帯が目に入った。

肇に会いたい。

思わずじわりと視界が滲む。

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