花に償い



わたしに出来ることをしよう。

「薫子さま?」

手にクリームを塗り込んでいた肇が顔を覗き込んでくる。

「何かお考えですか」
「貴方との起業について」

顔を輝かせて肇はわたしの手を握った。

「はい!」

飯田橋家が一家離散しても、肇は前と変わらない。
わたしを守る為に百合音についたというのだから、どれだけ従順なのだろう。

「信頼って大事よね」
「ええ、はい」
「でも貴方は一度わたしを裏切ったじゃない?」

分かりやすく顔を暗くする。理由くらい素直に言えば良いのに、と思う。

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