花に償い
手を振っている。犬みたいに。
わたしは自分の運命を呪った。
道路を挟んだ向こうにいた肇がこちらへ来ようとする。
じわりと涙が滲む暇は無かった。
車が操作を誤り、突っ込んでくる。
肇は交通事故で死んだ。
百合音への花を買いに行って。
百合音は、その死を乗り越えて、彼との絆も深めていた。
そんなのって、そんなのって無いでしょう。
気付いたときには走り出し、わたしよりずっと大きい男にタックルしていた。
大きなブレーキ音と、人々の悲鳴が聞こえる。
「薫子さま、薫子さま!」
肇の声がする中、意識が薄れていくのを感じた。