花に償い
ベッドから降りようとするのを止められた。
肇はにこにこしながらベッドの端に座る。
ふかふかのベッドが軋む音がする。
「下宿先に行っても良いのですが、隙間風が酷いのと壁が薄いので……」
「女将さんに怒られるわよ」
「俺はどこでも良いんですよ? 薫子さまと一緒に居られるなら」
尻尾と耳が見える。
「あと、これはお返ししますね」
渡した通帳と巾着が返ってくる。わたしはそれを手に持つ。
「これをお返しする為に、あの日、店へ行ったんです」
こうして返ってくるとは思わず、見つめた。
思えば、そうだ。