花に償い

辻褄は合う。
いや、辻褄が合うようになっている、のでは。

わたしが肇を救ったから。

わたしもこうして生きながらえている。

「薫子さまは偶にそうして、違う方みたいな表情になることがありますね」

どきりとした。膝の上にいる肇が穏やかに微笑んでいる。

「俺は貴方のことも好きですよ。だから、追い出さないでください。薫子さまのことも、俺のことも……」

向う脛に唇が落とされる。その姿が妖艶で魅入ってしまった。

続いて脹脛、くるぶし、足の甲。

「服従のキスです」

どんな王子がするよりも美しい所作。

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