花に償い

肇にとってはそこまでの力ではなく、その場に座り動くことはない。

「この駄犬が」
「ごめんなさい」
「馬鹿」
「ごめんなさい」

頭を垂れて謝っている。謝れば良いという問題ではないと思う。

溜息を吐き、シーツを被り直した。

「……ハジ、コンソメスープが飲みたい」
「はい! 用意します!」

見えないはずの尻尾が見えた。

立ち上がり、肇がキッチンの方へ向かおうとする。それを視線で追いながら、初めてここへ来た時のことを思い出した。

あの日の、薔薇。

「百合音さんに、薔薇は届けられたの?」

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