花に償い
その言葉に振り向く。目が合い、瞬きをする。
「……薔薇?」
「持ってたじゃない、最初に会ったとき」
記憶は確かだ。事故は百合への花を買いに行った帰りに起こった。
肇は思い出したような顔をした後、わたしの肩辺りへと視線を向ける。この短期間にわたしは怪我をし過ぎだ。
それから犬耳を垂れさせながら、少し笑う。
「あれは、薫子さまへ買っていったものなんです」
「え?」
「優一さまから、薫子さまの居場所を教えて頂いたので」
事ある毎に出るその名前。
思えば、優一はあのお店を知っていた。