花に償い
そうだ。
わたしを裏切らせ、百合音の方へ肇をつかせたのも彼。
肇にわたしの店を教えたのも彼。
わたしに肇のことを頼んできたのも彼。
ふと嫌な方へと思考が動く。
あの時間に肇がわたしに会いに行くと知っていたら。
彼ほどなら、人を使って車を突っ込ませることも可能なのでは。
それからあの強盗。
あの強盗も。
「薫子さま?」
呼ばれて、そちらを向く。
「あの日は薫子さまの誕生日だったじゃないですか」
え、と再度声が漏れる。そんなのは知らなかった。誕生日の描写は無かったからだ。