花に償い
それにしても久々にゆっくりと眠れた気がする。下宿先のベッド、固いのよね。
家主が居ないのを良いことに、身体を倒し、枕に飛び込んだ。
肇が元気そうで良かった。
幼い頃、近所に住んでいた犬みたいな男子が家に転がりこみ、使用人として一緒に育った。
あの頃は楽しかった。家族も皆、仲が良くて。
百合音を陥れようと肇に共犯を持ちかけた頃くらいから、肇はあんまり笑わなくなって。
それは裏切られて当然だ。
わたしと一緒にいたら、こうして一家離散に巻き込まれていたことだろうし。
賢い選択をした。
そう考えながらも涙がでる。