毒にまみれた世界にて

「和子さん、こんな体罰じゃ手ぬるいわよ。完璧な人間にするなら、もっと辛くて苦しいものを与えなきゃ」

これを使いなさい、そう言い義母はケインを和子の手に渡すと部屋を出て行く。それを、秀は絶望に満ちた表情で見つめていた。



数時間後、百回以上和子は鞭を振り下ろして腕に疲れを感じつつも、赤子のように泣くことしかできない秀を睨み、言った。

「あなたに「秀」と名付けたのは、「優秀」な子になってほしいと思ったからよ。でもあなたは、勉強も運動も何もできない。あんたなんか、産むんじゃなかったわ」

そう和子が吐き捨てるように言うと、秀の瞳が大きく見開かれる。また、彼の口から嗚咽が漏れた。

「今夜は夕飯は抜き、そのままそこで反省していなさい。明日は朝から夕方まで私が勉強を見てあげます。ちょっとでも間違えたら、わかっているわね？」

そう言い、和子はドアを乱暴に閉めた。これが運命の歯車を狂わせることになるとは知らずに……。