毒にまみれた世界にて
数時間後、朝を迎えた。和子が部屋に入ると、不気味なほどに無表情な秀がいた。
「おはよう。よく反省したの?」
「……はい」
感情が一ミリも入っていない声に和子はゾクリと寒気を感じたものの、「さっさと食べて勉強するわよ」と言って秀の腕を掴んでリビングへと連れて行く。
朝ご飯を食べさせた後、和子はすぐに秀を膝の上にうつ伏せの状態で寝かせ、問題集を解かせることにした。一問間違えるたびに叩けるよう、物差しの準備は忘れていない。
「さあ、やりなさい」
和子はそう言い、テストで八十五点しか取れなかった英語の問題集を渡す。するとーーー。
「は?」
和子は耳を疑った。秀はスラスラと書かれた英文を読んでいる。しかも、秀は英会話なんてできなかったはずなのに、まるで留学でもしたみたいに、ペラペラと英文を読んでいる。
「えっ、何で……」
和子が戸惑っている間に、秀はもう問題を解き終わっていた。秀に「終わりました」と言われ、ようやく和子はそれに気付く。