Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
今日の午前中に俊次のした似たような質問がオーバーラップして、みのりの思考が一瞬止まってしまう。
こんなところが似てるのは、兄弟だからだろうか……。
「遼ちゃん……難しいこと訊いてくるね……」
みのりからそう返されてはじめて、遼太郎は自分から出てきた質問が、一言で答えられるものではないことを覚った。
考えているみのりに、「答えなくていいです」と言いかけた時、みのりの方が口を開いた。
「教師は生徒誰にでも平等に接するべきなんだけど、人間同士だからやっぱりどうしても相性もあるし、生徒の個性や境遇とかもあって、大勢いる子の中から思い入れのある子が出てくるのね。思い入れが生まれるのはいろいろきっかけがあるけど、私が自分から個別指導をしようと言い出すのは、思い入れがある生徒だけだよ。遼ちゃんもそうだったし、俊次くんも、学校辞めた荘野くんも、他にもいるけど……。あくまでも〝指導〟だから、その行為はやっぱり教師としての〝仕事〟だよね」
「……そうなんですね」
みのりが考えて出した答に、遼太郎は一応相づちを打ったが、なんだか釈然としなかった。
みのりがどんな思いで個別指導をしてくれていたのかを知りたかったのに、そこまで語ってくれていなかった。
その時、みのりが言葉を続けた。
「……だけどね、遼ちゃんへの指導は、私にとってただの仕事ではなくなっていったの。遼ちゃんは生徒だったから教師としてあってはならない感情だと、指導しているときはずっと苦しかったけど……、好きな人と二人っきりでいられるすごく大事で特別な仕事だった」
遼太郎は運転をしながら、密かに息を呑んだ。みのりが一生懸命考えて答えてくれたことを、ドキドキする胸の鼓動を伴いながら心に刻みつけた。