Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
遼太郎が人間として成長するために、みのりは自分の恋情を犠牲にしてまで別れる決断をした。その時の二の舞になるのではないかと、遼太郎は少し怖くなった。
「もし樫原が辛いと思って苦しんでいるようだったら、俺の方から適度に距離を取ります。俺にとって一番大切なのは、先生なんです。それを忘れないでください」
遼太郎はチラリとみのりへ視線を向けて、念を押すようにその右手を握った。
「……うん。……樫原くんって言うんだね。遼ちゃんは優しいから、ちょっと不安になったの」
暗い車内に響くみのりのつぶやきを聞いて、遼太郎の胸がキュッと軋んだ。
衝動的にみのりを抱きしめて、キスをしたくなった。けれども運転中なので、今はとにかく我慢した。
「……でも、『好きにならないで』なんて言っちゃったけど、遼ちゃんの心は遼ちゃんのものだから、私が口出ししちゃダメなんだよね」
みのりの自戒のような言葉を聞いて、遼太郎はその意味を考える。みのりは自分が年上だから、わがままは言えないと思っているのだろうか……。
「逆に、先生がそんなふうに思うことに、俺が口出しすることじゃないかも…ですけど、俺は先生が『好きにならないで』って言った時、嬉しかったです」
それを聞いて、みのりが意外そうな声を出す。
「え?!そうなの?普通は自分の気持ちを指図されると、面倒くさいと思ったり、イラッとしてしまうものじゃないの?」