Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
確かに、相手がみのりでなかったら、そう思っていただろう。
遼太郎には、かつてそう思ってしまった〝経験〟があった。今となっては、それも貴重な経験と言えるのかもしれない。
「俺のこと好きじゃなかったら、あんなこと言わないし……。可愛いって思ってる彼女に、あんな〝わがまま〟言われるのも心地いいものです」
遼太郎はそう言いながら、指を絡めてみのりの手を握り直し、そこにギュッと力を込めた。
みのりの胸がキュンと痺れて、赤面してしまう、握られている手の、そこに込められた遼太郎の想いを感じ取って、みのりは左手も添えて両手で握り返した。
「遼ちゃんの手、きれいになったね」
半ば照れを隠すように、みのりが別の話題を持ち出した。
「え?きれいに?どういうことですか?」
「今は毎日ラグビーしてないからかな?高校生の時より、あんまりゴツゴツしてない気がする」
「高校生の時の、俺の手……。先生、覚えてるんですか?」
遼太郎自身、自分がどんな手をしていたのか記憶は定かではない。
「覚えてるよ。何度か握手したでしょ?そのたびに、もう二度と触れられない人だと思ってたから、記憶に刻み付けてるの」
「……受験の前の、コンビニでお守りくれた時とか?」
「うん……。あのときは、遼ちゃんは生徒だから諦めなきゃ…って、必死で思ってた」
遼太郎の胸が、今度はキューっと痛みを伴って苦しくなった。