Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「愛ちゃんって、本当に明るくていい子なの。私が東京の遼ちゃんのところに行く勇気をくれたのも、彼女なの」
それを聞いて遼太郎が気色ばんだのを、みのりは察して話を続ける。
「もちろん彼女は、私の好きな人が遼ちゃんだってことは知らないけど。だけど、私が遼ちゃんに会いたくて泣いてたとき、いつも励ましてくれたのよ」
「……先生。泣いてたんですか……?」
どうしても遼太郎の意識の焦点は、愛のことよりもみのりのことになってしまうようだ。
「恥ずかしいけど、何度かね。好きな人のこと訊かれて、どうしても遼ちゃんを思い出しちゃって……。だけど、自分から別れた状態だったから……苦しいけど……どうしようもなくて……」
そう言って説明する声が震えてくる。
今がこんなに幸せでも、あのときの気持ちを思い出すと、涙が込み上げてくる。それほど遼太郎と離れていた時間は、みのりの心に大きな傷を残していた。
「先生……」
離れていた時間は、遼太郎にとっても辛いものだったけれども、遼太郎を『傷つけた』と思っていたみのりは自分を責めて、行き場のない想いに希望も見出せず、遼太郎以上に苦しんでいたのかもしれない。
「……ごめんね。遼ちゃんにも辛い思いさせて……」
涙を堪えているのは、その声を聞けば分かる。みのりの想いを共有して、遼太郎もじわりと目頭が熱くなったが、敢えて明るい声を出した。