Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「はい。帰り道を教えてもらった時に、このイルミネーションがあるって言ってて、一番綺麗に見えるこの場所を教えてもらいました」
「そうだったの……。それにしても、何でこんなにすごいものがこんな山の中に……」
「このイルミネーションは、古庄先生のお姉さんが地域活性化のために企画したものらしいです。他所から人を呼ぶためというより、住んでる人が楽しむためだって言ってました」
「それで、クリスマスなのに誰も見に来てる人がいないんだ。古庄先生に感謝しなきゃね。こんなに素敵な景色を二人っきりで見られたんだもの」
そう言って、みのりはまた煌めく夥しい光の粒に目を移した。
またしばらく冷たく澄んだ空気の中、夢のような光景を、二人で時を忘れて見つめ続ける。
みのりは、今ここにある幸せで胸をいっぱいに満たした。こんなに美しく幻想的な景色を眺めながら、愛しい人に包まれているなんて、これ以上の幸せなんてあるだろうか…。
「……遼ちゃん。私、この景色、一生忘れない。この空気の冷たさも、遼ちゃんの胸のあったかさも、遼ちゃんの声も息遣いも、全部。ずっとずっと死ぬまで忘れないからね……」
みのりの体を包む遼太郎の腕をギュッと抱きしめながら発せられた、みのりの誓いのような言葉。それは何の躊躇もなく、遼太郎の胸の一番深いところへ届けられた。そしてそこを、キュッと痛むように震えさせる。
同時に遼太郎は、腕の中にいるみのりが、またどこかへ行ってしまうような微かな不安を感じてしまう。