Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「そんなに頑張って、俺のこと憶えてなくていいですよ。俺はずっと先生の側にいるんですから……」
そう言いながら遼太郎は、ギュッと腕の中の空間を狭くして、みのりの髪に顔をうずめた。
遼太郎の方こそ、今腕の中にあるみのりの匂いや柔らかさを忘れたくないと思った。
切なすぎる想いを含んだ沈黙が漂う。
どんどん膨らんでいく愛しいという想いに、目の前の光景さえも見えなくなりそうになる。
すると、沈黙を貫いて、暗く冷たい空気に、みのりの声が響いた。
「……遼ちゃん?お願いがあるの」
また、みのりが可愛いお願いをしてくると思った遼太郎は、張りつめていた気持ちをフッと抜いた。
「もうすでに、〝ギュッ〟としてますけど?」
「……うん、そうじゃなくて……。あのね……」
と言って、みのりはその心の中にある躊躇いを表すように言葉を溜めた。
遼太郎も大事なことを告げられるのだと察し、そっと耳を傾ける。
「遼ちゃんには、何からも縛られないで自由でいてほしいの。私の側にいるために、遼ちゃんの意志を曲げたり諦めたりしないでほしい。夢をかなえるためだったり、……もし他に気になる人ができたりして……、私から離れたくなったら、いつでも自由に行きたいところへ行っていいんだからね?だから、そのときは悩んだり我慢したりしないで、正直に伝えてね?」
みのりが真剣に本心を伝えてくれていることは、声の響きや口調で分かる。
だからこそ、遼太郎は何も返す言葉を見つけられなかった。