Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
大学に入学する前の、桜が咲いていたあの日の別れ——。
今のみのりは〝別れ〟こそ持ち出さなかったけれども、その気持ちはあの日からずっと変わっていないことを、遼太郎は悟った。
こんなことを言うのは、みのりが何よりも自分のことを一番大事に考えてくれているからだということは、遼太郎にも分かっている。
分かっているけれど、〝トラウマ〟と言っていいほどに、胸に刻み込まれている過去の出来事が遼太郎を震えさせた。
さっきこそ『過去はどうでもいい』なんて言っていたのに、その〝過去〟がどれだけ自分の心を揺さぶり萎縮させるのか、改めて思い知った。
たった一言で、遼太郎をこんなにも揺るがしてしまうみのりの言葉の力——。それに翻弄されて、遼太郎は自分を制御できなくなる。
遼太郎は黙ったまま、震えているのを押し殺すように、みのりを抱きしめる腕にギュッと力を込めた。
なんと言って応えたらいいのか、分からなかった。いくらみのりの〝お願い〟でも、『分かりました』とだけは、どうしても言えなかった。