Rhapsody in Love 〜二人の休日〜

「……！？」


突然手を握られて、驚いたみのりが遼太郎を見上げる。すると、遼太郎はみのりの手を握ったままそれを動かして、コーヒーを二つのカップに注いだ。


「ケーキの二の舞になるところでした」


「は？……え？零れそうだった？」


気づいてないところがみのりらしくて、遼太郎は自然に笑えてくる。


「せっかく史上最大級に美味しいコーヒーなのに、零したらもったいないです」


「零しても大丈夫。ケーキと違ってコーヒーは淹れなおせるもん。なんなら、もっと念を入れて想いを注ぎ込んで淹れてあげる。ドロッドロのコーヒーを！」


ちょっと開き直ったみのりの物言いを聞いて、遼太郎からはもっと笑いが湧き出してくる。「ククク…」と笑い声を立てながら、手にしたカップからコーヒーを口に含んで、


「あ…！」


と、思わず声を上げ目を丸くした。
その美味しさに本当に驚いて、遼太郎はみのりとコーヒーを交互に凝視した。


「ふふふ、美味しい？飲んでくれる人への想いを込めて淹れてるからね。遼ちゃんに淹れてあげるコーヒーが一番美味しいに決まってるの」


そう言ってみのりは、自分の方が満たされたように、にっこりと幸せそうに微笑んだ。