Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
・みのりの彼氏?
高校時代は自転車で通っていた3キロちょっとの道のりを、帰省の荷物の入ったリュックを担いでランニングでたどる。
盆地を囲む遠くの山々。市街地から外れた田んぼや畑の中に民家が点在する見慣れた景色。けれども、今日の遼太郎には、まるで違って見えた。
夏休みに帰省した時は慌ただしく、特にみのりのことは考えないようにしていた。会いたい気持ちで切ないほどだったけど、会ってもらえないのにそれを望んでも、もっと辛くなるだけだったから……。
枯れていた自分の心には、見えているどんな景色も映っていなかったように思う。
だけど、今は違う。
遼太郎は人生の中で絶対に忘れられないだろう、とても大事な〝経験〟をした。外見では判断できないけれど、内側では大きな変化があった。
以前、この道をたどっていた自分とは、まるで違う人間になってしまったかのような錯覚を覚えた。
年の暮れの晴れ渡って青く澄んだ空や、明るく温かい陽射し、目に映る見慣れた何気ない景色のすべてが、とてもかけがえがなく美しく心に響くようだった。
冷たく重かった心は柔らかく解れ、心地よい熱を持って、遼太郎の全身を羽のように軽くした。このまま、どこまででも走って行けそうな気がした。