Rhapsody in Love 〜二人の休日〜



俊次の忠告を受けて、プロテインの置いてある戸棚を開いてみる。すると、3つの味以外にも、いろんな味のプロテインが入っていた。


「なんで、青リンゴ味?他にもいろいろあるじゃんか」


「や、それ、不味いから。なかなか減らないんだよ」


「………」


『不味い』と言われて、それをわざわざ飲みたくもなかったが、優しい兄は敢えてそれを取り出した。


「そうだ、OB会と言えば。みのりちゃんがOB会に来てくれることになったよ」


俊次の誇らしげに話すその内容に、遼太郎の手元が狂って、思わずプロテインの粉をこぼしてしまう。
知ってることを知らないふりするのは、遼太郎にとって思いの外難しいことだった。


「仲松先生が?」


「うん。俺の試合には、応援に来てくれるって約束してっから」


「先生、正月は忙しいんじゃないのか?」


「忙しくても、みのりちゃんは俺のために来てくれるんだよ!」


甘えん坊の俊次は、自信ありげにそんなふうに言いながら、スマホを片手にソファーに寝っ転がった。


「……『俺のために』……か」


俊次の言葉の一部が、遼太郎の意識に引っ掛かって、遼太郎は思わず呟いていた。



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