Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
みのりを挟んで、ゴーレムやトロール級の大男がぎゃんぎゃん言い合ってる。その様子は、皆の注目を浴びることを避けられなかった。
そして、皆は一様に、渦中にいるみのりの姿に視線を奪われた。特段気合を入れておしゃれをしているわけでもないのに、みのりはそこにいるだけでくっきりと浮き立つ存在だった。
困り顔のみのりを見かねた遼太郎が、スパイクシューズを履き終え、立ち上がる。現役部員やOBの人ごみを抜けて、三人のところへ歩み寄った。
「もう2時になるから、集まった方がいい」
遼太郎に声をかけられて、二俣は意味ありげに眉を動かしてその場を離れる。俊次は遼太郎のことは気にも留めず、みのりの腕を掴んだ。
「俺、みのりちゃんのために特等席を確保してっから、こっち来て」
俊次に手を曳かれて歩きながら、みのりは後ろを歩く遼太郎を振り返った。目が合った遼太郎は、無言のまま瞳で問いかける。
「遼…」と言いかけて、みのりは慌てて口をつぐみ、改めて口を開く。
「…狩野くん。明けましておめでとう」
みのりの「狩野くん」を聞いて、遼太郎は目を見張って見つめ返す。けれどもすぐに、表情を緩めて、
「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
と、返した。