Rhapsody in Love 〜二人の休日〜



特等席には違いないけれども、みのりは自分がものすごく場違いのように感じた。一人だけ特別扱いされているようで、チラチラ向けられる家族たちからの視線がなんだか痛い。


だけど、せっかくの俊次の気持ちを無駄にはできなかった。それに、他のラグビー部員たちも顧問の江口も、誰も何も言わなかったので、みのりは遠慮がちにその席に落ち着いた。


「あれ、みのりちゃん?来てたんだ?」


その時、慣れ親しんだ女の子の声がした。


「愛ちゃん。明けましておめでとう。愛ちゃんこそ、まだ引退してなかったの?」


と、みのりは白々しく言ってみたけれど、愛がこの場に来ることは知っていた。
新年の挨拶をされて、愛は改まって頭を下げる。


「明けましておめでとうございます。…って、そうなの、みのりちゃん!お兄ちゃんに、試合中の水の用意や道具の片付けやらで人手がいるって言われて……、もう引退してるはずなのに、ひどくない?」


愛は口を尖らせながらも、しっかりと頼まれた仕事はこなしているみたいだ。両手にはスクイズボトルが収められたバスケットを持っていた。


——よし、うまくいったみたいね!


みのりは愛の話すのを聞きながら、そう思ってニコリと笑った。



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